書評:The white Masai

The White Masai: My Exotic Tale of Love and Adventure

The White Masai: My Exotic Tale of Love and Adventure

メチャクチャ面白い本だった。

これは完全ノンフィクションストーリー。スイス人女性が、ケニアのモンバサに観光で訪れて、そこで「川を隔てて向こう岸にたたずんでいた」美しいマサイ族の青年に一目ぼれをし、プロポーズして、結婚する。そこから何もかもが異なるケニアの草原でのハプニングだらけの生活が始まる。

ウシの糞と拾ってきた木で出来た家、水道がなく、食べ物ももほとんどなく、客観的に見れば「飢え」とはこのことだろう・・・という状況下での生活。それもそのはず、乾燥した大地では作物が育たず、家畜のヤギがいるのみ。たまーにお祝い事があるときには殺して肉を食べるが、それ以外はミルクのみ。ミルクに、砂糖をめちゃくちゃ入れて、紅茶いれて、チャイを作る。これがほぼ主食。

著者のスイス人女性は、最初は英語さえ話せず、ほとんどコミュニケーションが取れなかったようだが、決意した女性は強い。英語を勉強し、なんとかコミュニケーションを取れるようになったかと思うと、ほとんど野宿の飢餓生活にも順応していく。マラリア、肝炎などにかかり、命の危険にもさらされた。西欧諸国とは全く異なる伝統的な風習も、我慢して受け入れた。夫への愛のため、何も諦めようとはしないのだ。すごい。本当にすごいことだと思った。

そしてやってきた妊娠・出産。正直、施設も全然整っていないケニアでの出産はかなり怖かったに違いない。ただ、彼女は勇敢にもやりとげる。すごい。

さらに、現金収入を得るため、彼女はその村初めての食料を売る店や、観光客向けのお土産やなどを作る。すごい。ただ、思えばこのあたりから、二人の関係には陰がさしたのかもしれない・・・

結局最後は離婚してしまう。なぜか。最も重要な要因は、夫の嫉妬深さだ。我々が住んでいる世界では、既婚女性が夫以外の男性と話すことなんて当たり前なのだが、マサイの彼は、ちょっと目を離した隙に美人の白人妻が浮気をしているのではないかと、気が気でならない。執拗までの追及、イラつき。彼女は完全に自由を奪われ、彼への愛も消えうせて行く。
最後は、「スイスに休暇に帰る。必ず戻るから。」と言って、彼を騙すようにして1歳の娘と共に、スイスに帰国する。これ以降、もうケニアに戻ることはなかった。


まぁ、驚きの連続のストーリーです。邦訳版はなく、洋書のみですけど、難しくないので是非読んでみてください。なんか、人生観がちょっとだけ変わりました。いろんな生きかたがあるんだなぁ、って。